真壁建築計画工房














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■夕陽ヶ丘の家

2010年竣工 在来軸組木造2階建て 延べ床面積89u
所  在:神奈川県平塚市
構造設計:筬島建築構造研究所
施  工:成幸建設株式会社

 平塚市の海側の市街地は七夕祭りが有名で、その期間は多くの人で賑わいます。普段は閑静な住宅街に位置するこの建物は、横浜に通うご主人の交通の便がよく、子育ての環境が整い、家族が好きな海に近いという希望に見合う新しい生活の場としてこの土地を選び、家族4人が楽しく豊かに住まうための住宅です。
海に近い立地に伴い屋根と主な外壁は耐候性が高く比較的安価なガルバリウム鋼板(素地)を施したシンプルでクールな外観ですが、それとは対照的に内部は温か味のある素材が用いられています。1階は9坪に奥様が将来英会話教室を開くことを考慮した可変性のある多目的な部屋と浴室やトイレなどの水廻りをコンパクトにまとめています。2階は開放過ぎず周りの気配を常に感じられるキッチンと繋がるダイニング、それらの床から35cm上がったところに8帖の畳敷きの寛ぎのリビングが配されています。その畳床の中央に設けた掘りゴタツの他は全て収納としています。上部には将来子供部屋にも使える12帖のロフト空間があり、リビングの吹抜けと繋がり空気と気配が繋がるように小窓を設けています。
狭小の敷地でで前面の道路以外は隣家と近接していることから、使用頻度の高いリビングとダイニングの窓には障子を入れて外からの視線を気にせず穏やかな自然光を取り込めるよう配慮しています。なお、内壁にみられるラワン合板は、統一した木質の素材感を図ること、省コスト化、可変性が容易であること、そして建物の構造強度を高めるために多用しています。






■杏の家

2008年竣工 重量木骨SE構法 2階建て 延べ床面積136u
所  在:東京都練馬区
構造設計:NCN
施  工:株式会社山崎工務店

 この住宅はイギリス人のご主人と日本人の奥様、娘さんの3人家族の生活の場として建てられました。建て替え前の既存の家屋と庭の配置をあまり変えない条件のもと、平らな屋根としその屋上スペースと庭はDIYが趣味のご主人と庭いじりや家庭菜園がお好きな奥様がこれから時間をかけて築き上げていく場所となっています。構造は、敷地が計画道路に掛るため鉄筋コンクリート造は不可能で、鉄骨造か木造かの選択肢のなかで費用の面などから信頼性の高い重量木骨構造(SE構法)を選択しました。SE構法は一般の軸組工法の木造より割高ですが、用いる木材の強度が均一で耐力を数量化でき的確な構造計算が可能であること、保証制度があるなど費用対効果が明瞭なことが建て主とともに計画を進める上でメリットでした。また、地盤が多少軟弱なので、生活する上での不安をできるだけ少なくするため安全率を増し柱状地盤改良や頑丈な基礎の構造として将来の地震に対する備えとして費用を充てています。間取りを纏める上で生活の中心となる1階LDKの南側に台所が配されたことと隣家からの距離が少なく午後の陽が入りにくいことから、北側吹抜け上部に大きな天窓を設けています。ここで用いた中空で断熱性能がある乳半のポリカーボネート板が拡散するやさしい光を空間に提供しています。動線や間取りを計画する上で、多少障害のある娘さんと普段は施設におられる介護が必要なお母様が家で過ごす際の使い易さやスムーズな動線、バリアフリー化を図っています。

■千石の家

2008年竣工 在来軸組木造2階建て 延べ床面積79u
所  在:東京都文京区
施  工:若尾相互建設株式会社
造  園:神山造園

 都心の住宅街に茶室を設えた木造2階建ての住宅です。建て主は、1981年当時の私が勤務していた設計事務所で最初に担当した住宅と同じ方です。当時まだ珍しい鉄筋コンクリート造の打放し仕上げで、26年が経ちますが維持管理が良いせいで健在でした。今回、その隣の土地を購入したことを機に故郷にお住まいのお母様を呼び寄せて一緒に暮らすこと、そして茶道の先生をされている奥様の茶室を設えるための離れ家として設計の依頼を受ける機会に恵まれました。与条件から2階はご高齢のお母様が凡その生活がまかなえられる程度のコンパクトなワンルームの間取りで、1階との動線は階段のほか電動の椅子式階段昇降機で補っています。1階は主に八畳広間、三畳小間、水屋の茶室と露地から構成されています。限られた予算でしたが、工事を担当した施工者の熱心な協力もあり、茶室や露地廻りはできるだけ無垢材を用いることや偽品を用いないこと、素材の吟味や線を細くするなど細部の納まりにこだわり、麁相で瀟洒な趣きを醸し出す佇まいになるよう心掛けて予想以上の出来映えとなりました。





■目白の家

2007年竣工 在来軸組木造2階建て 延べ床面積115u
所  在:東京都豊島区
施  工:小川建設株式会社

 目白の幹線道路から踏み入ると、そこは都心とは思えない閑静な佇まいの住宅街が続き、緑が生い茂る徳川ビレッジや目白庭園など、古くからこの土地の伝統を継承する民度の高さを感じる地区です。この住宅は、このような土地柄で広い敷地に世代をこえて継がれてきた伝統的な木造の母屋に隣接する子世代家族のための「離れ家」の建て替えです。設計を進める上での与条件は、親と子世代の暮らし方に見合った機能性、安全などの基本的で合理的な性能のほか、建て替える建物本体だけではなく北側にある母屋からの景観を害さないことやできるだけ日影をつくらないことなど互いのバランスを重視し、建て替え部分を南側隣地にできる限り寄せることが求められました。また、将来はこの「離れ家」だけを残して土地を分筆し親と同居することも想定されることから、最小限の敷地を設定し、親が住むことになるリビング・ダイニング、キッチンや水廻り、寝室を2階建ての1階部分に配することが必要でした。これらのことで直接南側からの採光が望めない1階の住空間に如何にして自然の光を導き、明るい空間を確保するかが課題でした。その解決策として、南側に「光の井戸」に見立てた1坪のスケルトンな階段室を配し、上部に設けた大きめの窓から取込んだ光がスレンダーな鉄骨階段を通り抜けるように1階の主な住空間に導いています。西側に配したリビングは母屋への日影や景観上の配慮から平家建てにする必要があり、その屋根に天窓を設けることで内部の奥まったところまで自然光が至る明るい空間を生むことができました。北側は、母屋からの見え方や開口部の大きさや位置に配慮しながら親と子家族の日常の勝手が良い繋がりを確保しています。

■土沢の舎

2004年竣工 在来軸組木造2階建て
延べ床面積:住居棟189u、アトリエ棟110u
所  在:岩手県花巻市東和町
施  工:太田建設株式会社

 敷地は花巻市の東に広がる田園風景に囲まれた人口約1万人の街の関城跡のある丘から南へ緩やかに傾斜する長閑で緑豊かな住宅地に位置します。主な与条は、既存の南部造りの蔵・豊かな植生・地形・畑・池はそのまま残し、父親と依頼人である長男夫婦、神奈川に住む長女の計4人が生活する心地の良い住居をつくることでした。また、陶芸等のアトリエを別棟として設け、そして近所の人や客を招き入れ易い環境にすることでした。計画する上で敷地の周辺は今後も大きな変化はないと思われたので、建物を環境に馴染ませるように検討を進めました。広い敷地ですが、残すべき諸条件と地盤の状況から建築に適す範囲が限定されるなか、冬に北西の風を遮蔽するため、敷地西側に南北に長くアトリエ棟を設け、東寄りにある蔵との間に住居棟を配し、各々の平面型を「くの字」に変形させながら敷地に馴染ませました。また、蔵と各棟で赤松の大樹を囲むように配置にすることで、風情ある外部空間が出現しました。そして、住居棟とアトリエ棟の間を北側のアプローチと南側に設けた駐車場を結ぶ路地とすることで、近隣の人が入り易い環境が整いました。建物の屋根と外壁は、性能とコストからガルバリウム鋼板を採用し、周辺との調和を図り銀鼠色とし、そのクールな表情に木製の建具が温かみを加えるようにしています。内部は、各個室のプライバシーを確保するため距離を持たせながら広い居間空間と連続させ、冬場の生活にも開放感を与えています。居間が家の中心をなすよう各動線はここを経由して展開するよう位置付け、居間と庭は大きな開口部とオープンデッキを介して視覚的に繋げています。室内に使用した素材は主に天然の木と漆喰で構成され、建物全体に統一感を与えています。各部屋の開口部は採光と通風のほか四季折々の移ろいを内部に取り込むように設けています。室内の熱環境の面では、夏は軒の出や樹木による直射日光の緩和と通風、屋根や外壁の通気層による躯体温度上昇の軽減。冬はランニングコストを抑えるため灯油を熱源とした温水放熱機(アトリエはF.F暖房機)を設置した床下暖房システムで、容量の大きい吹き抜け空間を安定した熱容量で心地よい環境を実現しています。また、居間には薪ストーブを設け、冬場に視覚的にも温もりを感じられる空間となっています。












■武蔵野の集住
(建築と共用部インテリアデザイン監修)
2008年竣工 RC造5階建て集合住宅 延べ床面積6000u
所  在:東京都西東京市
建築設計:(株)小島建築設計室
施  工:株式会社淺沼組

 この建築は、風情ある千川上水の緑が連なる街道沿いに面して計画された集合住宅です。その街道の先に広がる武蔵野中央公園を含め建物のファサードがそれら恵まれた自然の景観と呼応し、建物全体を場所に馴染ませるため2階以上の各住戸のバルコニーは吊り戸式のガラリ戸を配しました。このガラリ戸は可変性のある簾のようなもので、夏場の日差しを和らげる機能とともに各住戸の適度なプライバシー確保の役割があります。また、均一になりがちな集合住宅のファサードに有機的な変化を与え、外に対する表情を和らげる効果を担っています。
インテリアでは1階のエントランスからホール、共用ラウンジから庭へ至る軸線を強調させつつ、外部との繋がりと統一感を持たせながら使用する用途にそって素材をや視覚的な密度、シークエンス及び照明効果を吟味して落ち着いた空間となるよう計画しています。

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